認知科学者ロジャー・C・シャンクは「人間は論理を理解するようにできていない。人間は物語を理解するようにできているのだ。」と言っています。

情報が溢れた現代において言葉や論理を並べるよりも、相手の記憶に残るのはストーリー(物語)仕立てで伝えると効果的である、ということです。

アメリカで”Story Telling”(物語を伝えること)という概念ができただけあって、全米ではストーリーテリングのフェスティバルも開催されています。

しかし、日本ではまだまだなじみがないものです。マーケティングの専門用語で「ストーリー」という言葉が使われているものの、「物語」と言うとどうしても映画や本や絵本を想像してしまいますよね。

今日は、ビジネスにおいて「物語」を取り入れるってどういうこと?についてお話したいと思います。

<目次>

1. 「ストーリー」が身近にあるアメリカ

2. 「物語」と「事実」は対局?

3.感情に訴える記憶は残りやすい

4.「思わず買ってしまう」のストーリー活用事例

5.ストーリー作りってどうやってやるの?

1. 「ストーリー」が身近にあるアメリカ

アメリカでは「個人のストーリー」を歌自慢大会のように発表するフェスティバルが結構盛んです。草分けの存在であるNational Stroy Telling Festivalには毎年1万人以上が集まるそうです。

私が8年程前アメリカに短期留学していた頃のことですが、先生が英語の学習にと勧めてくれたものに”Story Corps”というサイトがありました。直訳すると「個人史」という意味です。

これは国家プロジェクトで、「アメリカ人にそれぞれの個人史を音声で残してもらうように働きかける」というもの。これは個人史をウェブサイトで広めて誰かの役に立ててもらうというよりも、参加する家族やカップルがお互いにインタビューし合うことで絆や友情を育むことを目的としているようです。

日本語で紹介しているサイトがあったので、興味のある方はこちらをご覧ください。

2. 「物語」と「事実」は対局?

「事実は物事をはっきりさせるもの、物語は楽しむもの」

「物語は核心ではない」

「物語は事実を隠し、事実は真実を明らかにするもの」

「物語」に対してこのようなイメージを持っていると、物語と事実は反意語だと捉えてしまうでしょう。

なぜわざわざ物語をビジネスに持ち込まなければいけないの?と思いますよね。

では、次に物語をビジネスに活用するメリットについてお話したいと思います。

3.感情に訴える記憶は残りやすい

なぜわざわざ物語にするか?ですが、それは、物語にした方が記憶に残りやすく、ビジネスにおいて優位に立つことができる方法だからです。

例えば、高校受験の時に詰め込んで覚えた歴史の年号。

これは短期記憶と呼ばれるもので、平均80分、長くて2日続くと言われています。皆さん、テストが終わったら歴史の年号なんてきれいさっぱり忘れた覚えはないでしょうか?

一方、「長期記憶」と呼ばれるものはある意味一生続くと言われています。

例えば、フグを食べて亡くなった知り合いがいたら、

フグ→怖い→気を付けなければいけない食べ物→なるべく食べないようにする

といった思考回路ができあがります。途中には「怖い」という感情が生まれていますよね。このようにして感情に刻み込まれた記憶というものは「人間の命を守るための防衛本能」のような役割として私たちの能力として備わっているのです。

ストーリーを活用するメリットは、感情に訴えかけやすく、共感を得やすいから。

脳科学的にも記憶に残る仕組みになっているということです。

4.「思わず買ってしまう」そんなストーリーとは?

なるべくはっきりとイメージを持ってもらいたいので、ここで1つの事例を挙げてみます。

あなたはワインショップにワインを買いに行ったとします。テーブルワインで1,000円~1,500円くらいの赤ワインを探しているという設定です。特に好きな銘柄も品種もある訳ではないので、店主がオススメとPOPに書いてある数々のワインを見比べています。

「どれを選んでも大差ない」そう思っていたところに、このようなラベルが目に入ります。

https://www.wine.com/product/2-brothers-big-tattoo-red-2005/90389#

このワインはエリックとアレックスという二人の兄弟のアイデアから生まれました。彼等にはある理由があって、アレックスが製造し、エリックが描いたラベルを貼ったワインをあまり堅苦しくないやり方で売りたいと考えていました。

二人の目的とは、がんで苦しんで亡くなった母親に敬意を捧げることでした。二人はこのワインの売上から1本あたり50セントを来たバージニアのホスピスや各地のガン研究基金に寄付することにしています。2002年の冬には、850,000ドルを寄付することができました。

いかがでしょうか?

もし決め手に困っている時にこのようなメッセージを読むとほとんどの人が迷わず「このワインにしよう」と思うのではないでしょうか。

ストーリーテリングという名前がなかなか浸透しない日本ではあるものの、近年このように物語を活用している日本企業も少しずつ増えているような気がしています。

5.ストーリー作りってどうやってやるの?

ストーリー作りは、こだわりの雑貨屋さんの商品ラベルに「こういう想いを込めて作りました」というメッセージを添えることとは全く違います。

ストーリー作りのポイントとなるものは下記のようなものだと私は考えます。

・HP上でコンセプトや目指しているビジョンを明確にする

・商品や会社概要にも載せる

・商品のラベルにも載せる

・SNSの発信にも活用する(ストーリーの伝え方は工夫が必要)

そしてストーリーを作る上で重要なこと。このワインメーカーからヒントを得るなら、行動に一貫性を持たせ、起承転結をつけることです。

ビジョンに向かって何をしているか?具体的な行動の結果、どうなったか?それがどう経営や顧客に影響しているか?

このような実績をブログやSNSで発信していくことでストーリーができていくのではないかと思います。

考えることが意外と多く、なかなか一筋縄ではいかないストーリー作り。しかしうまく活用できれば、差別化できそうにない商品にブレイクスルーが起こります。

なるべく記憶に残るために脳科学的な視点を入れてみてもよいかもしれませんね!

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